Contemporary Art
極小美術館
Kataoka
Mihoka
片岡
美保香
2025.11/16(sun)~ 2025.12/14(sun)
espoir 51
観覧申し込みは090-5853-3766まで。入場は無料
カンヴァスのなかの自由
片岡さんがはじめて極小美術館を訪れたのは15年前。当時は加納高校美術科に通う高校生で、きっかけは恩師の加藤誉使子さんが参加するグループ展「池田山麓現代美術展2010」だった。それまで現代美術というものをまともに見たことがなかった片岡さんは、一流の美術家たちが見せる高い技量に目を奪われ、表現の多様性に衝撃を受けた。その後、芸大進学を目指しつつ極小美術館の運営に関わり、「自分も美術の世界で生きていかなければならない」という意思が固まっていったという。
芸大在籍中は「描くこと自体は楽しいものの、はたして何を描くべきか」と悩み続けた。自分探しをしながらたどり着いたのは、女性ファッション誌のページから人物や衣装を切り抜き、それらを任意に組み合わせたコラージュを油絵制作の着想源とする方法だ。自分には似合わない服と、それをさらりと着こなすモデルへのあこがれが、創作のモチベーションになることに気がついた。このときからカンヴァスは、かなわない欲求やとどかない理想とたわむれる場になった。
絵を描く楽しみを自分のなかで発動させるために、片岡さんがよく用いる手法がある。それは「不在をつくること」「意外性をつくること」「表と裏の関係をつくること」で、コラージュはこれらを模索するための手段である。ファッション誌の1ページから、お気に入りの服やモデルを切り抜くと、そこには人型のすきまが残る。切り抜いた服やモデルだけでなく、このすきま(人の気配)を含んだ背景もコラージュの素材になる。片岡さんはストックした素材を、感性のおもむくままにカットしてつなげたり、すきまから覗かせたり、裏返して重ねたりして、自分が油彩で描きたくなるモチーフ(たとえば異世界の住人のようなもの)を見つけ出す。そこにはこの世のことわりから外れた、ある種の謎が含まれている。こうして得られた虚構の世界をカンヴァスに写し、自分の筆致と色彩感覚でもって手なづけていく。
片岡さんはおよそ10年間、主にこのファッション誌のコラージュにもとづく制作を行ってきた。途中、コラージュの素材を自分の思い出の写真(札幌のモエレ沼公園で撮影したもの)などにかえた派生作品も生みだしている。コラージュの複雑さは時期によってばらつきがあるものの、この手法を長く続けてきた背景には、絵は理屈で描きたくないという意識があったのではないかと推測する。裏を返せば、さだめから逃れられない現実や「べき思考」から自由になれない自分というものを、どれほど窮屈に感じていたのだろうかと想像せずにはいられない。
最近、彼女の描く絵が変化の兆しをみせている。本来は自分を解放するはずの制作において、いつの間にか自分を縛っていた決まりごとがある。そのひとつを無くしてみたらどうなるか。新たな試みから生まれる作品は、これまでとは違ったストーリーを語り出すにちがいない。

見えないあの子(2025年制作)
油彩、アクリル・キャンバス 1167 × 910mm

運ぶ(2025年制作)
油彩、アクリル・キャンバス 530 × 455mm

垣間見る(2025年制作)
油彩、アクリル・キャンバス 455 × 380mm
片岡美保香
- 【略歴】
- 1992
- 岐阜県生まれ
- 2011
- 岐阜県立加納高等学校美術科卒業
- 2017
- 愛知県立芸術大学美術学部油画専攻卒業
- 【個展】
- 2015
- 片岡美保香展 (アトリエ幻想工房 / 岐阜)
- 2018
- 「The emancipation of self」 (Gallery Valeur / 名古屋)
- 2019
- 「眺めるものたち」 (Gallery Valeur / 名古屋)
- 2020
- 片岡美保香展 (極小美術館 / 岐阜・池田)
- 2021
- 「佇む気配」 (Gallery Valeur / 名古屋)
- 2021
- 片岡美保香展 (山県市美術館 / 岐阜・山県)
- 2021
- 「憧れの可能性」 (フランス料理レストラン オー・エ・セル / 岐阜)
- 2023
- 「日常とユーモア」 (加藤栄三・東一記念美術館 / 岐阜)
- 【グループ展】
- 2017
- 現代美術の新世代展 (極小美術館 / 岐阜・池田)
- 2017
- みのかもannual 2017 (みのかも文化の森 / 岐阜・美濃加茂)
- 2017
- BLACK TICKET 2017 (N-mark / 名古屋)
- 2018
- みのかもannual 2018 (みのかも文化の森 / 岐阜・美濃加茂)
- 2019
- 現代美術の視点 (極小美術館 / 岐阜・池田)
- 2019
- 亀崎せこみち展2019 (半田市亀崎町一帯 / 名古屋)
- 2020
- イナイナイアート (茅野市民館 / 長野)
- 2020
- わたしの一点「つながる原風景」 (織部亭 / 一宮)
- 2021
- 現代美術の作法 (極小美術館 / 岐阜・池田)
- 2021
- 篠田守男と極小美術館の作家たち (アートスペース羅針盤 / 東京)
- 2022
- HANDA ART VISION (旧中埜半六邸、半田赤レンガ建物 / 愛知)
- 2023
- SPOT FIGHT (Gallery Valeur / 名古屋)
- 2023
- ドローイングからの伝言 (Gallery Valeur / 名古屋)
- 2024
- 推し展 (WACCA池袋 / 東京)
- 2024
- 山県市ゆかりの作家展 (山県市美術館 / 岐阜・山県)
- 2024
- くうそう (Gallery Valeur / 名古屋)
- 2025
- flat (Gallery Valeur / 名古屋)
- 2025
- 池袋回遊派美術展2025 (自由学園明日館 講堂 / 東京)
- 【受賞歴】
- 2022
- SIBUYA ART AWARDS 2022 入選
- 2023
- 池袋アートギャザリング公募展 IAG AWARDS 2023 KONOYO賞
- 【コレクション】
- ■ 山県市
■ 極小美術館
■ Lucca445
■ GALLERY Valeur - ※開催時点