Contemporary Art

極小美術館

2022.2/14(mon)~ 2022.2/19(sat)

Art Exhibition

アートスペース羅針盤(東京都中央区京橋)で開催

内側に見せる、外側に見える 

高北幸矢 (清須市はるひ美術館館長)

 現代美術には重要な2つの精神がある。1つは、新しい表現を追求、拡大することであり、もう一つはグローバル社会における矛盾、不条理を正すことである。

 新しい表現については、産業革命において誕生した写真以降、印象派を経てダダイスム、キュビスム、フォーヴィスム、シュールレアリスムから始まり、さらにコンセプチュアル・アート、ランド・アート、デジタル・メディアヘと、果てしないパワーを爆発させている。グローバル社会における矛盾、不条理を正す精神は、アール・ブリュットから始まり、メキシコ壁画運動、グラフィティ・アート、現代美術におけるフェミニズム、性の問題、環境問題、サブカルチャーの台頭等、現代美術を難解で複雑かつ高邁なものとしている。

 しかし、この2つの精神は互いに深い関わりを持っている。コンセプチュアル・アー卜やランド・アートが社会の不条理を正し、地球平和、環境問題に強くメッセージを発して、多くの共感を得てきている。ピカソの『ゲルニカ』やマティスの『ダンス』が魅力的なのは、キュビスムやフォーヴィスムの表現の新しさを超えた優れたメッセージにある。

 山内寿美の[inside] シリーズは、アクリルボックスの中に様々な素材・技法を内包することで造形創作を行っている。この「内側に見せる、外側に見える」という作品は、鑑賞者にとって同時二元性の提示がなされている。受動と能動、無関心と誘惑、主観と客観といった対立概念を有している。また海洋プラスチック問題をテーマに、排除と共存、絶滅と進化、醜悪と美という対立も見受けられる。

 [inside] シリーズが現代美術として高い魅力に溢れているのは、新しい表現の試みとグローバル社会における矛盾、不条理をテーマとしているからにほかならない。

[ inside ]

DMイメージ

山内寿美

【略歴】
1985
岐阜県立加納高等学校 美術科卒業
1989
筑波大学 芸術専門学群 洋画コース卒業
2011
池田山麓現代美術展 2011 宇宙の連環として 一新進作家と現代美術家一 極小美術館・岐阜県池田町
2012
山内寿美展 極小美術館・岐阜県池田町
2015
岐阜県立加納高校美術科 50周年記念展 岐阜県美術館・岐阜市
2017
現代美術の新世代展 2017 極小美術館・岐阜県池田町
2017
山内寿美展 [mixed-media] ギャラリーいまじん・岐阜市
2018
小さな絵の展覧会 2018 ※以降毎年 スペースプリズム・名古屋市
2019
現代美術の視点 2019 極小美術館 + カフェ・フランドル・岐阜県池田町
2019
ギャラリーいまじん 10周年記念企画展・岐阜市
2020
Win the Virus展、Win the Virus with SNS展 スペースプリズム・名古屋市
2020
X’MAS ARTIST SHOP 2020 ※以降毎年 スペースプリズム・名古屋市
2021
現代美術の作法 2021 極小美術館 + カフェ・フランドル・岐阜県池田町
2021
篠田守男と極小美術館の作家たち アートスペース羅針盤・東京都中央区京橋
2021
山内寿美展 [inside] スペースプリズム・名古屋市
【コレクション】
■極小美術館
■河合歯科クリニック
■カフェ・フランドル
■みんなの寺善応寺
※開催時点

 ここ数年、アクリルボックスの中に様々なミクストメディアを構成した [inside](ヒトの内側)シリーズを制作している。

 当時、海洋プラスチック問題が浮上した頃、様々な対策がとられたものの、人体に入り込む有害物質を完全に排除することは、日常生活を営む上でもはや不可能であろう。それならば排除するのではなく、いっそ取り込んで進化したとしたら…、それは醜悪でとても美しいだろう、という妄想からはじまった。

 そして現在、未知のウィルスに人類は脅かされ続け、ついにはヒトの心もむしばんでいった。

はたして進化はただの妄想だったのか。

 それでも作り続けなければ、どうにかなりそうな心情のなか、目に見えないものへの恐怖、畏怖、そして、同じく目に見えないものへの想いや祈り、そんなものがないまぜになった作品群を、ヒトの進化が妄想だとしても、創作の原点に変わりない。