Contemporary Art

極小美術館

2012.6/17(sun)~ 2012.8/31(fri)

No.07

観覧申し込みは090-5853-3766まで。入場は無料

素材に想いを語らせる作家

長澤知明(彫刻家・極小美術館 代表)

 1975年、第1回大垣市野外彫刻展が市の文化会館庭園で開催された。水野幸道は翌年、第2回展より出品し始める。
 当時、宇部彫刻ビエンナーレ、須磨彫刻ビエンナーレが隔年で開催され、大垣市近郊に世界有数の石材会社が背景にあることも相まって、ささやかな市の予算の中で始まった。
 年々参加作家も増えて30人前後の若い彫刻家が競う展覧会となった。
 パネリストに堀内正和、保田春彦、篠田守男、河口龍夫、中村英樹(美術評論家)らを迎え、会期中テーマに沿ったシンポジウムも企画され、充実した展覧会になっていった。
 そんな中で中村英樹は、彫刻作品の多くに台座があることに触れ、記念碑的要素を排除し、素材に埋没するのではなく、コンセプトの確立こそ最優先されるべきと説いた。圧倒的に「石」を素材にした作品が多かったせいもあるが、今考えてみると正に真理をついた指摘だった。
 第9回展で大垣市野外彫刻展に終止符を打ったのは、箱庭のような庭園空間に閉塞感があったのと、より開放的な空間に羽ばたきたいという作家の意識の高まりがあった。
 10年目を迎えた1985年、岐阜市北部の緑豊かな野外センターに会場を移して「岐阜現代彫刻シンポジューム」として一区切りをつけた。
 その間、多くの若い作家が行き交ったが、現在もなお作家活動を継続しているのは数人にすぎない。水野幸道もその一人であるが、彼ほど「石」という素材を慈しみ、対話を重ね、命を鮮らせる彫刻家は珍しい。2005年、岐阜市の建築会社1階のロビーで開催された水野の個展は、気負いもなく、さらりとした表現で石に想いを語らせ、作者の確かな造形力が伝わってきた。打ちっぱなしのコンクリートの小宇宙に呼応し、石の作品群は見事に息づいていた。
 40年あまりに及ぶ「石」との長い対話の中で、彼の独特のフォルムが確立したようだ。
素材に想いを語らせる稀有な作家の一人と言える。 (文中敬称略)

残されたものから(2012年制作)
300×40×30㎝ 御影石

水野幸道(個展会場で)

【略歴】
1951
愛知県に生まれる
1975
岐阜大学教育学部卒業
1975
二人展[ギャラリーはくぜん] (名古屋)
1975
第2回大垣市野外彫刻展[大垣市文化会館庭園]以後4回展まで出品
1978
二人展[ギャラリーはくぜん] (名古屋)
1979
松阪彫刻シンポジューム (松阪)以後3回展まで参加
1981
個展[井阪オフィスギャラリー] (伊勢)
1982
長良川大賞野外彫刻展[岐阜県美術館 他]
1983
FIST展[愛知県美術館] (名古屋)以後毎回出品
1983
個展[ギャラリーはくぜん] (名古屋)
1985
岐阜現代彫刻シンポジューム (岐阜)
1985
個展[岐阜県美術館一般展示室]
1988
個展[井阪オフィスギャラリー] (伊勢)
1988
池田野外彫刻展[岐阜県立池田高校]以後毎回出品
1993
ART FROM ECOWORLD[美濃白川] (岐阜)
1994
ラベンダー祭野外彫刻展 (清見村・岐阜)
1996
見せたい見たい美術展 (大和村・岐阜)
1997
スパイラルアミューズ企画展97[スイトピア] (大垣)
2002
個展[ジャック&ベティ] (岐阜)
2004
現代彫刻展 (松阪)
2005
個展[希望社] (岐阜)
2008
飛騨高山現代美術展 (高山)
2008
個展[ジャック&ベティ] (岐阜)
2010
ベスパ・プリマベーラと作家たち[極小美術館] (池田・岐阜)
※開催時点