Contemporary Art

極小美術館

2014.1/12(sun)~ 2014.3/23(sun)

espoir 10

観覧申し込みは090-5853-3766まで。入場は無料

つぎはぎの刹那 

森 啓輔 (ヴァンジ彫刻庭園美術館 学芸員)

 早瀬交宣の《浮遊体―floater》は、透明なポリ塩化ビニルで坐禅の仏像が象られ、ヘリウムガスが内部に注入されることで、作品名どおりに「浮遊」している。早瀬の眼に映る現代の日本人がもつ宗教観の曖昧さや、歴史的背景(神仏習合や神仏分離)に由来する捉えがたさが、作品には如実に投影されていることだろう。つまり、早瀬と私たちにとっての宗教とは、信仰として普遍的な概念ではなく、いつまでも疑わしく、中空を揺らぎ続けているということだ。また、立体作品のみならず、映像など他の手法を用いて早瀬が制作を続けていることからも、かつて不分離の関係にあったはずの芸術と宗教の存在価値自体を、現代の視座から見据えようとする野心が見え隠れする。しかし、宙を浮き続けるそのような対象として作品を経験する観者は、これまでどれほどの数におよんでいることだろうか。むしろ、日を追うごとにガスが漏れ続け、最終的に地面にへばりつくこととなる残骸としての《浮遊体―floater》をこそ、眼にした者は多いかもしれない。それは、坐禅というシンメトリカルで安定的な形態が、下降とともに徐々にその形態を自壊させていくという、天/地、美/醜、定形/不定形といった複数の対立項をはらんでいることを意味している。
 つぎはぎであること、このことはおそらく構造的な特性以上に、《浮遊体―floater》にとって決定的なメタファーである。複数のパーツによって構成される「寄せ集め(アッサンブラージュ)」であるそれは、私たちのもつ宗教観も同様に、様々な断片の集まりとしてその概念がかろうじて保たれており、かつ概念の崩壊がいつでも起こりうることを示唆するだろう。早瀬の作品とは、引き裂かれる時間としての最小単位を表す仏教用語にあるように、いつでも刹那的なのだ。また早瀬は佐藤哲至とユニット「イムネ申」を組んでいる。その名称にも存在、意味、形態、時間、音といったさまざまな位相において、宗教観の解体は暗示されていた。仏と神は「イ」と「ム」、「ネ」と「申」へ、と。

「浮遊体 ー floater」 Photo関 ひとみ

早瀬交宣

【略歴】
1975
岐阜県生まれ
2098
神戸大学経営学部卒業
2006
武蔵野美術大学 視覚伝達デザイン学科 卒業
2011
明星大学 造形芸術学科非常勤講師(2012年3月まで)
2008
武蔵野美術大学 視覚伝達デザイン学科研究室 助手(2012年3月まで)
2012
武蔵野美術大学 視覚伝達デザイン学科 非常勤講師、東京工科大学デザイン学部 演習講師
【受賞歴】
2006
武蔵野美術大学卒業制作展
2006
優秀賞TBS Digicon+1 奨励賞
2007
第12回学生CGコンテスト 動画部門優秀賞
【作品発表】
2009
「複眼思考 - Looking through a compound eye」 art space kimura ASK? (東京)
2009
「AIAF(オーストラリア国際アニメーションフェスティバル)」
 Forum 6 Cinema (Wagga Wagga、オーストラリア)
2009
「MIAF(メルボルン国際アニメーションフェスティバル)」
 ACMI (Melbourne、オーストラリア)
2009
「SIAF(シドニー国際アニメーションフェスティバル)」 
 シドニー工科大学 (Sydney、オーストラリア)
2009
「EKSJO ANIMATION FESTIVAL」エークシェー市内 (EKSJO、スウェーデン)
2010
「複眼思考 - Looking through a compound eye」 art space kimura ASK? (東京)
2011
「池田山麓現代美術展2011 宇宙の連環として 1」極小美術館 (岐阜)
2012
「複眼思考 - Looking through a compound eye」 art space kimura ASK? (東京)
2012
「池田山麓現代美術展2012-象の檻」極小美術館 (岐阜)
2013
「幽体離脱しちゃったみたい」gallery COEXIST-TOKYO(東京)
2013
「Pictoplazma Berlin」BABYLON am Rosa-Luxemburg-Platz(Berlin、ドイツ)
※開催時点