Contemporary Art

極小美術館

2018.1/28 (sun) 〜 2018.4/1 (sun)

No.26

観覧申し込みは090-5853-3766まで。入場は無料

臼井千里(秀泉)個展によせて

古川秀昭
(OKBギャラリーおおがき館長、前岐阜県美術館館長)

 臼井家とは千里さんとの前にフィレンツェと関わりのあった声楽家の妹の和子さんと交流があり、私がフィレンツェに2か月滞在した折に、お世話になったような気がしている。千里さんは臼井家でのホームパーティーで名ホステス役であった印象がある。その時弟さんがムソルグスキーのピアノ曲「展覧会の絵」をさりげなく弾いた驚きも記憶している。そしてしばらくして千里さんが「書」家であったことに驚くのだ。したがって臼井千里さんが書家ないし墨象作家と知るのはさほど昔ではない。2017年、シティ・タワー43の吹抜けホールで千里さんの10メートルもあろうかという大作「生命力」を見て、彼女の健在ぶりを確認し、昨年秋に久しぶりに大垣市蓮華寺の臼井家で千里さんの作品をまとめて見た。たぶん誰にも読めないであろう毛筆のアルファベットを含む作品群。「花」「夢」「阿修羅」「COSMOS」「LIKE TO LIKE」…。
 読んで理解することを初めから期待せず、ただ筆を手にはするものの、躍動する全身の運筆であろう。「ことば」が形に「文字」が形に「こころ」が形に「見えないもの」が形に、と自在に画面を走り回る。おそらく千里さん特注の筆で、東洋独自のあの「一回性」になる墨の黒と紙の白が美しい。墨の飛沫、思惟から遠い滲みや掠れ、予期せぬ墨の垂れなどまさに、彼女の主題「宇宙=コスモス」の出現であろう。
 海外旅行は150回を超えるという千里さんだから、アルファベット、漢字、ひらがなを「書」に意匠する感性は見事である。それに伴って世界各地での個展やグループ展で密かに自分と向き合わねばならない孤独な思いも人並みではないだろう。
 千里さんが敬愛する篠田桃紅さんの言葉「私は壁のシミを隠すぐらいのものは描きますが、シミの方が美しいかも」を絵描きの私も共に味わいたい。
 千里さんが今のわが身の力から解き放たれ、様々な現実に耐え忍ぶ力を得て、さらに遥かなる宇宙に憧れて、新たな一歩をあゆまれんことを。

COSMOS コスモス 夢 小宇宙
250×85cm(1990年制作)

COSMOS コスモス 小宇宙

COSMOS コスモス 小宇宙

COSMOS コスモス 小宇宙

COSMOS コスモス 小宇宙

COSMOS コスモス 小宇宙Ⅲ

臼井千里

【略歴】
1950
岐阜県大垣市生まれ
1982
米国ボストン 文化藝術交流展 ※83、84年
1984
創玄展 特選
1984
中部日本書道展 桜花賞
1985
中部女流展 朝日奨励賞グランプリ
1985
国連I.Y.Y.国際青年年国際会議 ルーマニア ブカレスト 文化交流展
1988
米国ニューヨーク展
1989
ドイツ・スイス・フランス 文化芸術交流展
1990
女流5人展(岐阜県立美術館)
1991
米国サンフランシスコ展
1991
TOKYO ART EXPO ’91(晴海埠頭)
1994
米国ユタ州ソルトレイクシティー交流展
1999
京都工芸・クラフト・アート展
2000
日中泰百家藝術大展 大賞(中国故宮博物院)
2001
美術画報大賞 表現技術賞
2001
イタリア年記念芸術作家賞
2001
EXPO ARTEC21 日仏美術の威信「現代と伝統」 日仏芸術「現代と威信」賞グランプリ(フランス パリ・リュクセンブルグ宮殿)
2001
BEAUJOLAIS NOUVEAU ビンテージアート展(東京フォーラム)
2002
美術画報 La Meraviglia展 「日伊藝術 驚異と美の饗宴」メラビリア国際金賞(イタリア ベニス・ゼノビオ宮殿)
2002
Exposition d’etiquuetes artistiques de Beaujolais Nouveau展(パリ・シャルルドゴール空港 ターミナル2F)
2002
英国ケント州政府主催 CHISATO USUI 個展(ケント州ラムズゲート美術館)
2003
イタリア ロレダン家 重要文化財作家認定
2003
岐阜県藝術文化奨励賞
2003
EXPO ARTEC 2003 日仏芸術大金章受賞(ルーブル美術館)
2003
美術画報 La Meraviglia展 「日伊藝術 驚異と美」メラビリア国際金賞受賞
2003
三輪酒造 「白川郷」、「干支作品」 ※~15年
2004
EXPO ARTEC21 カンヌ国際藝術祭 国際藝術賞
2004
デンマーク藝術世紀フェスティバル 「創造の奇跡」展 国際認定作家賞
2005
エヴィアン国際書道展2005 現代書 大賞
2005
書の美的表現展(プラハ国立美術館、東洋美術館)
2006
京都弁護士会 「憲法と人権」揮毫
2008
Festival D’Art Franco-Japonais 2008 フランス ブロア展 招待作家
2010
池田山麓現代美術展 「べスパ・プリマベーラと作家たち」(極小美術館)
2010
リネアート 2010 フランダース エクスポ(ベルギー ゲント)
2011
池田山麓現代美術展2011 「宇宙の連環として②」(極小美術館)
2012
ART EXPO NEW YORK ※13、17年(マンハッタンピア94)
2013
岐阜県芸術文化会議 芸術祭 「見たい見せたい美術展」(岐阜シティ・タワー43)
2014
岐阜県代表作家展(岐阜シティ・タワー43)
2017
岐阜県芸術文化会議 芸術祭で巨大作品「生きる」展示(岐阜シティ・タワー43)
その他
国内展をはじめ欧州、米、カナダ、豪州、中国、台湾などで個展
※開催時点

【ごあいさつ】

「書」と「私」が向かいあって四十年になります。
「書」とは一体どういう藝術なのか?

墨と筆と紙の藝術、書く人の魂や、心の息吹、その人の人間性が込められた藝術
精神性の反映される生命活動
古来から伝えられた佛教思想、西洋文化の影響をもうけた藝術
「書」の持つ幅広さと、奥行きの深さゆえに議論が 続いています。

私の書作の主題 ~コスモス・小宇宙~は、
私という作家個人の内なる心象です。
作品をご覧いただく皆さまおひとりおひとりの
内なる小宇宙に、どのようにか感応され、
作品を通して皆さまと作者とに、つながりが
生まれ深まることができれば幸いに存じます。


現代書
臼井 千里(秀泉)


英語版 (English)

It has been 40 years since I first encountered Calligraphy (Sho).
What type of art is Calligraphy?

It is the art of Sumi, brush and paper. But Calligraphy is more.
It is an expression of the calligrapher's soul, heart and humanity.
It reflects one's spiritual life; a life fusing traditional Buddhism with contemporary Western influences.
Because of its depth and breadth, Calligraphy invites discussion.

The theme I have explored "Internal Cosmos" is the expression of my inner world that I call internal cosmos.
I hope my art work speaks to you.
I appreciate your impressions and comments.


Chisato(Shusen) Usui
Modern Calligrapher

COSMOS 気配

 書は書玄会主宰加藤大碩氏に師事、近代詩文書(創設者 金子鷗亭 文化勲章)を学ぶ。
 1975年ごろから国際コーディネーターとして国内外における会議通訳、様々な国際交流プロジェクトの企画推進に取り組む。書においても国内展をはじめ英、米、仏、独、伊、カナダ、オーストラリア、中国、台湾など30ヶ国での個展、国際文化交流展に参加し、「書芸術」の紹介に努める。
 「書」は、ただ文字を書くのではなく「言葉」の持つ内面性を表現するもの、との考えにもとづいて「COSMOS小宇宙」をテーマとする様々な表現方法に挑戦し、『絵画のような書』と評される独自の墨象表現を創出している。


英語版 (English)

Usui was trained in modern calligraphy by Mr. Taisei Kato. Modern calligraphy [Kindaishibunsho] is a genre of calligraphy founded by Otei Kaneko, one of the three calligraphy masters of the 20th century in Japan.

Usui has been active as international conference coordinator and interpreter with many government projects around the world since the mid 1970s.
Usui began developing her own style of calligraphy through these international exposures.
Her form of calligraphy has come to be known as "painting-like calligraphy". For her, calligraphy is not a mere stroke of letters but an expression of artist's soul and the inner cosmos (world).
Usui has introduced her innovative modern calligraphy in more than 30 countries, including Australia, Canada, China, France, Germany, Taiwan, the United Kingdom and the United States.

【 臼井 千里 ホームページ 】

心の小宇宙、筆で探究 現代書家 臼井さん墨象作品展

 「臼井千里展」が、揖斐郡池田町草深の極小美術館で開かれている。現代書家の臼井千里さん(67)=大垣市鶴見町=が、内なる心象を表現した墨象作品8点が並んでいる。4月1日まで。
 臼井さんは国際コーディネーターとして通訳や国際交流活動をしながら、国内外で作品を発表してきた。文字性を離れ、絵画的な抽象表現を探究している。
 作品は、アルファベットや漢字を、渇筆や潤筆で大胆に表現。墨のかすれや垂れが躍動する。平筆でバーコードのように書いた作品は、もはや文字に見えない抽象画のようで、墨のにじみの表現が強い印象を残す。
 臼井さんは「作品はすべて小宇宙(コスモス)がテーマ。影響を受けたものが心の小宇宙に反映される」と話している。(箕浦由美子)

2018年2月27日 岐阜新聞掲載