Contemporary Art

極小美術館

2023.10/1(sun)~ 2023.11/5(sun)

espoir 42

観覧申し込みは090-5853-3766まで。入場は無料

ファーストアートか 

高北幸矢 (清須市はるひ美術館館長)

 同じような人物画が何枚も並んでいる。それらは無表情で、まるでアンドロイドのようである。もっとも私はアンドロイドに会ったことがないので、アンドロイドというものはこういうものではないかと思い巡らすのである。
 人物画というよりは、ポートレートあるいは肖像画と呼ぶべきものだろうか。絵画であるが、主に写真表現のポートレートの印象を受ける。バストアップという構図のせいかも知れない。街角の自動証明写真機ボックスにサンプルとして貼られているあの写真、誰の記憶にも残っているものだが、果たして明確に思い出せるものではないだろう。遠くから見て行き過ぎる風景の一コマに過ぎないが、結構脳裏に残っている。多分あの写真は同じ写真で数枚プリントされたものが貼られているのであろう。北村の人物画は一点一点誰かをモデルに描いていて、同一人物ではないことが確認できる。同一人物ではないが、一瞬同一人物かに見える。
 髪型は異なるが赤い髪、淡いピンクの肌、それぞれ形が異なる黒いシャツ。焦点は曖昧だが強い光の瞳、それを強調するように施されたアイメイク。口はそれぞれ異なるが眼の存在感が口の表情から個性を奪っている。グレートーンの背景に、型にはめられたかのようなバストアップの構図は、やはりあの自動証明写真機ボックスの写真だ。

 ポップアートで知られるアンディ・ウォーホルの代表作品『マリリン・モンロー』のシリーズを思い浮かべる人もいるだろう。ウォーホルの場合は同じ写真から部分的に色彩を変えたバリエーションとなっていて、北村の人物画がそこにルーツがあるとは思えない。しかしポップである。ポップではあるがあの1960年代にウォーホルを中心に世界を席巻したポップ・アートとは異なる。1960年代ポップ・アートは、その後、思想、技法、スタイルを広く感染させ、絵画や彫刻のみならず、デザイン、ファッション、建築、さらには都市、生活へと浸透していった。その影響は現代の北村のような世代の作家にも無意識のうちに入り込んでいるのかも知れない。
 ポップとはポピュラーの略で、「一般的」「大衆」「流行」などと訳される。であるならば、1960年代と2020年代は60年の経過があり、「一般的」「大衆」「流行」の内容は大きく異なっている。情報形態、情報量、我々の思考方法も激変している。1960年代のアンドロイドは、人間型ロボットであったが、現代ではスマートフォンなどの携帯情報端末のためのオペレーションシステムを指す。人間型ロボットは、より人間に近づくべく進化しているが、進化は遅々としている。むしろ人間がロボットに急速に近づいているのではないだろうか。スマートフォンは、人間の延長として、視覚、聴覚を補充し、人工臓器は精度を上げ、種類も増えつづけている。AIは人間の思考を先取りし、自意識を奪いつつある。

 ファーストフードを食べ、ファーストファッションを着て、ファーストリビングで暮らす。類似化するファーストライフにフィットするのは北村の絵画で、それはファーストアートと呼べるものかも知れない。

DMイメージ

「夜明けのうた」(2022年制作)
162.0 × 130.3cm 油絵の具、岩絵の具、箔、キャンバス

DMイメージ

「あたらしい世界」(2022年制作)
33.3 × 24.2cm 油絵の具、岩絵の具、箔、キャンバス

DMイメージ

「H氏像」(2023年制作)
41.0 × 31.8cm 油絵の具、岩絵の具、箔、パネル

DMイメージ

「春の詩集」(2023年制作)
45.5 × 27.3cm 油絵の具、岩絵の具、箔、キャンバス

DMイメージ

「色彩と無表情」(2022年制作)
油絵の具、岩絵の具、箔、キャンバス

北村武志

【略歴】
長野県生まれ
武蔵野美術大学日本画学科卒業
【展覧会】
91~
アールボコ展 (愛知県美術館等)
1998
個展 ※06、08、10、12、14年 (ガレリアフィナルテ/名古屋)
1999
現代アート東濃ざノ・こんりゅう展 (多治見)
2000
個展 (小野画廊/東京)
2003
個展 (ギャラリー北丘/多治見)
2004
個展 ※99年 (ギャラリー名芳洞/名古屋)
2013
End of 2013 (Galerie Hexagone/ドイツ・アーヘン)
2014
Art Expo (Galerie Hexagone/ドイツ・アーヘン)
2015
Aachen Art Fes. (ドイツ・アーヘン)
2015
個展 (半原版画館/瑞浪)
2015
個展 (Galerie Hexagone/ドイツ・アーヘン)
2018
WE Exhibition 2018 JCAT(Pleiades Gallery/ニューヨーク)
19~
アートキューブ展 (瑞浪)
2020
MUSA-BI展 (極小美術館)
2021
現代美術の作法 (極小美術館)
2021
篠田守男と極小美術館の作家たち (アートスペース羅針盤/東京)
2022
ノリタケの森4人の作家展 ※23年 (ノリタケの森ギャラリー/名古屋)
2022
個展 ※23年 (極小美術館)
2023
MUSA-BI展 (アートスペース羅針盤/東京)
【受賞歴】
13.16
熊谷守一大賞展入選
2018
TYK優秀絵画展大賞
2019
アートオリンピア2019 準佳作
2022
日本の絵画2022 入選
【コレクション】
▪半原版画館
▪スペース大原
▪多治見市
※開催時点