Contemporary Art

極小美術館

2023.3/5(sun)~ 2023.4/9(sun)

No.43

観覧申し込みは090-5853-3766まで。入場は無料

内側の生命

中村暁子(美術評論・前名古屋市美術館学芸員)

 水野幸道氏は、70年代から現在まで一貫して石の造形に取り組んでいる彫刻家である。彼が彫刻家としての歩みを始めた70年代から80年代にかけて、各地で野外彫刻展が開催されていた。水野氏は、大垣市野外彫刻展などに出品し、大ぶりな彫刻作品を制作・発表していた。しかし、野外彫刻の持つ性格として、不特定多数の人に見せることをひとつの目的とするということがある。また、観客はそこに設置された野外彫刻を、好むと好まざるとに関わらず、目にすることになる。作家は、このような野外彫刻の在り方と自らの志向するものとの間に乖離があると感じ、次第に発表の場と手法を変化させていった。その結果、近年の作品は、より親密な内面の表現となっている。
 近年の水野氏の作品は、石の器の中に小さなオブジェ状の石を詰め込んだり、升目状に区切った木の箱の中に石やガラスの作品を並べるなど、入れ物の中に小さな造形物を入れたものが多い。それらには蓋が付いており、蓋を開けるとそこにひとつの世界が広がるような仕掛けとなっている。展示の際に蓋を開けておいた方が中身がわかるのだが、作家はどちらかというと蓋を閉めておいて、状況が許せば、観客に開ける楽しみを体験して欲しいと考えているそうだ。
 水野氏は、石以外にガラスも素材として扱っているが、ガラスは主に日本酒の一升瓶を砕いて成形したものである。廃品となる素材を利用しているという。一升瓶のガラスは不均一であるため、出来上がった作品も変化に富んだものとなる。
 このように、御影石を中心に、大理石やガラスも用いて独特の造形物が作られているのだが、それらは常に、何か有機的なイメージをもたらし、生き物、生命を思わせる。作家が設えた器の中に、何らかの命が息づいているようだ。秘密の箱を開けると内側には豊かな生命がある。大きな野外彫刻という外へ向かうベクトルから、密やかな箱の中という内へ向かうベクトルに転じた水野氏の作品は、身近なものや小さなものの中にある心楽しい世界を改めて感じさせてくれる。

DMイメージ

残されたものから(2020年制作)
300x500x300 御影石

DMイメージ

残されたものから(2019年制作)
300x300x900 御影石

DMイメージ

残されたものから(2019年制作)
500x400x200 御影石

DMイメージ

残されたものから(2018年制作)
450x450x150 御影石・木

DMイメージ

残されたものから(2018年制作)
500x500x200 ガラス・木

水野幸道

【略歴】
1951
愛知県に生まれる
1975
岐阜大学教育学部卒業
1975
二人展[ギャラリーはくぜん] (名古屋)
1975
第2回大垣市野外彫刻展[大垣市文化会館庭園]以後4回展まで出品
1978
二人展[ギャラリーはくぜん] (名古屋)
1979
松阪彫刻シンポジューム (松阪)以後3回展まで参加
1981
個展[井阪オフィスギャラリー] (伊勢)
1982
長良川大賞野外彫刻展[岐阜県美術館 他]
1983
FIST展[愛知県美術館] (名古屋)以後毎回出品
1983
個展[ギャラリーはくぜん] (名古屋)
1985
岐阜現代彫刻シンポジューム (岐阜)
1985
個展[岐阜県美術館一般展示室]
1988
個展[井阪オフィスギャラリー] (伊勢)
1988
池田野外彫刻展[岐阜県立池田高校]以後毎回出品
1993
ART FROM ECOWORLD[美濃白川] (岐阜)
1994
ラベンダー祭野外彫刻展 (清見村・岐阜)
1996
見せたい見たい美術展 (大和村・岐阜)
1997
スパイラルアミューズ企画展97[スイトピア] (大垣)
2002
個展[ジャック&ベティ] (岐阜)
2004
現代彫刻展 (松阪)
2005
個展[希望社] (岐阜)
2008
飛騨高山現代美術展 (高山)
2008
個展[ジャック&ベティ] (岐阜)
2010
ベスパ・プリマベーラと作家たち[極小美術館] (池田・岐阜)
※開催時点